学生時代は、時間があっても、お金に余裕がなかった。社会人になって、自分で稼げるようになり、少し融通がきくようになる。しかし時間はない。
 学生の頃から、海外生活してみたい気持ちを持ちつつも、なかなか勇気が出ずに、後回しにしてきた。それよりももっとやりたいこと(=音楽)をやっていたし、海外生活を夢見る余裕もなかった。

 そんなある日、JR福知山線事故のニュースが飛び込んできて、人生の儚さを考えさせられる。当時の自分に対して疑問を持ち始め、
「人生いつ何が起こるか分からないし、やりたいことをやらなければ、もったいない」
と、より強く思うようになる。それでは、
「今、自分がやりたいことは何だろう?」
と、考えてみると、今まで先延ばしにしてきた「海外生活」が思い浮かぶ。

シドニーセントラル駅
ユニークなオブジェ「木の上の牛」

 夢を叶えるため、2006年4月出発を目標に、当時、勤めていた会社を退社。日本の社会から外れることや、帰国後のことを考えれば、もちろん不安はかなり大きかったけれど、動かずにはいられなかった。走り出したら止まらないし、止められないし、止めたくないし。
 まとまったお金を短期間で貯められるよう、8ヶ月間の派遣生活。タイミングよく好きなWEB関係の仕事が見つかり、スキルを磨きながら、日々節約に励む。

 一人だけで海外に行ったことがなかったので、いきなり海外生活をする前に、海外一人旅をしようとケアンズへ。1週間という短期間の滞在だったけれど、初ダイビングなど楽しむことがでた。
 より豪州に興味を持ち、次は“旅”よりも“生活”をしてみたいと思う。

 せっかく行くのだから、エージェントなどは利用せずに、自分で情報を集めて、ビザ、海外保険、航空券、年金や住民票など、すべての手続きを済ませた。また、入国してから、住む場所や語学学校を決めたかったので、4日分のバックパッカーを予約。

 海外生活するのは初めてで、どのくらいの期間、豪州に滞在できるのか、どこに移動してどこから帰るのか、そしてどんな未来が待っているのか分からないので、片道航空券での出発を選ぶ。

 苦しいはずの節約生活も、目標がはっきりしていると楽しみながら貯金できた。しかし虫歯の治療が終わらず、出発を2ヶ月間延期・・・。

 2006年6月、無事に虫歯の治療を終え、渡豪。

グレートオーシャンロードに行く途中、見つけた高く伸びる木